オランダ】世界第4位の国で、幸せについて考えた

オランダ

先日、「幸せな国」ランキングが発表されたとニュースに出ていましたが、
見た方はいるでしょうか。

世界各国の国民が日々の暮らしに満足し、幸せを感じているかどうかを調査した新たな報告書が発表され、ランキング首位のデンマークをはじめ、欧州北部の5カ国が上位を独占した。
報告書は米コロンビア大学地球研究所が9日、昨年に続く第2弾として発表した。世界156カ国で2010~12年に調査を実施し、国民の幸福度を10段階で示した。
それによると、上位5カ国はデンマークに続いてノルウェー、スイス、オランダ、スウェーデン。これにカナダ(6位)、オーストラリア(10位)、イスラエル(11位)、アラブ首長国連邦(14位)、メキシコ(16位)などが続き、米国は17位だった。
そのほかの主要国では英国が22位、ドイツ26位、日本43位。ロシアは68位、中国は93位だった。(CNN)

「幸せ」については、昔から個人的に興味があったところで、
また、せっかく世界各国を旅しているタイミングと言うこともあり、
肌で感じたことを整理してお伝えできればと思います。

「幸せ」って人によって違うし、こうやって順位付けたり比較するのは難しいものです。
だから、どうやって集計にしたかによって順位も変わってきます。

「ブータンが一番幸せな国だ」(国勢調査?)
「オーストラリアが一番幸せな国だ」(OECD)

当然調査の仕方により、ブレも、偏りもあることは認識しています。
ただ、あくまで今回はコロンビア大学のランキングを前提として、ちょっと考えてみました。

「幸せな国」上位の国の共通点とは

本当はニュース出て友達から感想を聞かれ、
すぐ書こうかな、と思ったのですが、その時点で気付きました。

「あ。10位までの国で訪問したのってオーストラリアだけだ」
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6位までの国は上記記事の通りですが、
7位フィンランド、8位オーストリア、9位アイスランドと続きます。
その時点では上位の国を肌で感じてはまだいませんでした。旅人にもあまり会っていない。
頭の中に浮かんできたのは、幸せな要因となるいくつかの仮説でした。

「この国々ってそもそも求めてるものが多くないんじゃないか。」
「社会保障が充実しているから、『不幸な人』が少ないんじゃないか。」
「そもそも競争が激しくないから、心が平穏なんじゃないか。」

昔読んだ「何もなくて豊かな島」に書いてあった「幸福=財/欲望」という幸せの定義が、
僕の中でしっくりきているのですが、それを基に考えると幸せになるには2つしかない。
何もなくて豊かな島―南海の小島カオハガンに暮らす (新潮文庫)

「財を多くするか」「欲望を小さくするか」

こうした中で、上位の国の共通点でパッと頭の中に出てきたのは、
「北にある(≒寒い)」「社会保障が充実している」「自然が多い」
「そんなに競争が激しいイメージはない(≒強い企業も少ない)」と言うこと。

社会保障は充実しているから、「財」と言う面ではとっても安定している。
つまりは、財が少ない人が少ない。
寒いから活発に活動するわけではなく、多くを望むような「欲望」は基本小さい。
自然に多く囲まれてて、癒しの環境が整っている。

結果的には、
総じて欲望が小さいし、財は安定しているから、
幸せだと感じる国民が多いんじゃないかと思ったのです。
財が少ない人が少ない分、不幸だと感じる人も少ないですしね。

オーストラリアは、寒いことはなく、社会保障については良く知りませんが、
何となくこれにあてはまっているような気がしています。
彼らはホント大らかで、のびのびとしている。休暇やアフター5の時間も満喫している。
多分、「仕事」や「お金」の優先順位は低くて、その面での欲望は小さい。
「自然の中でのびのび過ごす」ことに重きを置いている中で、その点は満たされている。

ただ、10位の一つの国を基に、机上の空論で話しても仕方ないなと思って、
世界第4位にランクインされていたオランダ訪問を待ちました。

オランダを訪問したところで、
僕が訪問した国はランキングのほんの一部です。
happiness_ranking

ただ、オランダでは、国際結婚をしている従姉の家にお邪魔し、
夫婦、子供3人、猫2匹のとっても興味深いオランダの生活を垣間見ました。

ランキング上位の国をざっと旅行するより、
深く肌で感じることが出来たんじゃないかと思ってます。
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期限に間に合わない。それを許せるか。

到着した日に晩御飯をご馳走になりながら、
単刀直入に聞いてみました。

「幸福度のランキング出てましたけど、実感有りますか?」

その答えは、「YES」でした。
オランダに慣れてしまうと、日本には戻れなさそうとのことでした。

残業はないし、1年間に2回以上は長期の休暇を取れるし働きやすい。
加えて、子どもを育てるにも、遊べる場所も沢山あるし、育てやすい、とのこと。

ちなみに、長期の休暇って言っても1週間じゃないですよ。
2週間以上です。

それに加えて、残業もない。羨まし過ぎますよね。
残業がなくても、付き合いの飲みも殆どありません。
「それで仕事まわるの?」そんな日本人が持つ素朴な質問を投げかけてみました。

事実そういうスタイルを送っているのだから、当然「まわっている」のです。
それが成り立つ一番の要因は何か。
話を聞いて思ったのは「期日・納期への意識が緩い」と言うことでした。

ここで重要なのは、事業者側が緩いだけでなく顧客側も肝要だということです。

例えば、
「ある業者が明日来るって言っていたのに、やっぱ来れないということが良くある。」
「今日が納期で、終業時点で終わってなかったら、よっぽどじゃなければ納期を遅らせる」
そんなことがあっても、事業者側も、顧客側もそれに対して別に気にしていない。

雨が多いオランダでは、晴れただけで仕事を切り上げてしまう人がいるようですが、
それも社会的に受け入れられているようです。

期日や納期に厳しい日本ではありえない話ですよね。
事業者側も無理をしてでも守ろうとするし、顧客側も遅れたらすぐクレームを付ける。

期日や納期を守ろうとするのが当然だと思ってた僕からすれば、
この話、軽いカルチャーショックでした。

でも少し考えてみればわかる気もします。

期日・納期をきちんと守るため何とかする。何とかしてきた。
次第に、顧客の要望も高くなり、それを当然と思うようになってきた。
しかし、結果として、お互いの首を絞めるようになっている。

これがなくなれば、事業者側も期限に対するストレスが減るし、
顧客側も無駄にいらいらする必要がなくなるわけです。

なんだか日本って、
「お客様第一」に、自分に厳しく、より限界までやり抜くことを是とする傾向があるけど、
お客様も同じ方向を見て、「自分が一番でしょ!?」と要求が高くなった結果、
結果として、お互いにゆとりがなくなって来てるんだろうなって思います。

期限など当然だと思い、
仕事を一緒にしていた人達にきつくあたっていた自分が少し恥ずかしくもなりました。
はて、僕たちは本当に幸せになる方向に進んでいるんだろうか。
そう投げかけられた、オランダの価値観でした。

日本より高い生産性への意識

でも、次に疑問が浮かんできました。
「『残業はなくて、納期もあまり守らない』それで国は成り立つの?」

南米で見た国々で納期も守らないと言うと、ルーズでダラダラしてた印象があります。

また、日本で仮に、そんなことをすれば、TOYOTAやPanasonicなどは競争力を失う。
しまいには、国自体傾いてしまうんじゃないかと思ってしまいます。

それに対してなるほどなと思えるオランダの価値観は2つあって、
一つは「残業と生産性に対する意識」もう一つは「競争に対する意識」でした。

残業=悪と言う意識の強いオランダ。
残業は、他の人の仕事を奪うもので悪だと意識的に考えられているだけでなく、
残業代には50%を超える高い税金がかかると、制度の上からも意識付けされています。

残業をあまりしない分、オランダの人は生産性への意識は高く持っているようです。
例えば、今日が期限のある仕事に対し、
今日なら残業して10人が5時間かければ期限内に終わるが、
明日なら専門家が来るので1人8時間やれば終わるとなったら、
納期を無視して明日やるのを選択するという話をしていました。

だから働く時間が短くても、アウトプットを維持することが出来る。

長時間労働を避けることで、時間当たりの生産性をあげる。ワークシェアをする。
これからの日本でとっても大事な方向性だなと感じました。

いやいや、それでもねって思う人もいると思います。
僕も思いました。

そんなんでアメリカ・日本的競争で勝つことが出来るのか。

これに対する回答が興味深かったです。
「とうの昔にそういう競争からは降りたんじゃない?」

オランダ発の会社ってPhilips位だけど、
それも世界からみたらそこまで大きい会社じゃない。

負けないためには、闘わない。そもそも競争のレールに乗らない。

それを実践している国なのかなと思いました。

それだと仕事が減り、失業者が増えるんじゃないかって感じるかもしれませんが、
なにも大企業で働くだけが仕事じゃない。大企業だけが雇用を産み出してるわけじゃない。

オランダでは教育の早い段階から、振り分けが進んでいくようです。
大企業に行く人は、大学に行くべくそういう道に進んで相当勉強する。
違う道を選ぶ人は、違う道に適した勉強を重ねていく。

多くの人がリクルート的就職活動と言う一つの線路に乗せられる日本とは違います。
ここでも競争を避けるよういくつかのレールが用意されているのだなと感じました。

お金や出世ではない幸せのベクトル

ゆとりがあって、休みが多くても成り立つことは何となく理解できました。

でも、重要なのは、それでほんとに幸せだと感じられるのか。

きっと休みが多い代わりに失ってるものもあるはずです。
ここは、推測ですが給料とかなんだろうなと思いました。

日本では休みも然ることながら、
(特に男性には、)競争に勝って、高い給料もらって、いい肩書きを持つこと、
それが幸せだと思っている人も多いように思います。
みんなが同じ幸せを追いかけ、同じ方向を向いて競争をする。
必然的に幸せになれない人も出てきてしまう構造なんだと感じました。

一方オランダでは、給料が多少少なくなっても、
休みが増えて家族と共に過ごす時間が増えれば幸せだ。
こう考えている人が多いんでしょうね。
そこに競争はない。みんな幸せだと思える。不幸だと感じる人は少ない。
ここが、幸せの国ランキング上位に来る肝な気がしています。

ちなみにオランダは、
働いている女性は多いけどフルタイムで働いている人は少ないと言います。
フルタイムとパートタイムの差別が法律で禁止されており待遇に差がないため、
パートタイムを選ぶ人が多いようです。
働き方も自分で選べることで、家庭の時間を守れているようです。

本当の「ゆとり」は教育から

競争の先に「幸せ」を見ずに、
ゆとりや家族との時間に「幸せ」を見出す。

その価値観は、どこから来ているのだろうと考えると、
教育が重要な意味を持っているのだなと感じました。

なにより一つ意外で印象的だったのが、
子どもが小さい間に1人で放置してはいけないという法律です。

つまり、小学生の鍵っ子なんてありえないんです。
送り迎えも必須で、子どもが1人でいると親が罰せられてしまいます。

ベビーシッターが高く、逆に働き方に融通が利くこともあり、
親が多くの時間を子どもと過ごしている、
そのコミュニケーションの多さがまず土台にあるのだと思います。

それに加えて、
ユニセフが「世界一子どもが幸せな国」としてあげたオランダの教育。

「5歳から義務教育で、理由なく休むと罰金」という意外に厳しい側面もありますが、
学校では、主要科目のみやり、音楽や美術や家庭科などの科目はやりません。
それらの科目はやりたい人が自分で先生を探してやるようです。

日本の様にあれもやり、これもやり、と詰め込むようなことはしません。
日本のなんちゃってゆとりとは違う、本当のゆとり教育がそこにはあるようです。

また、日本と違い年数が決まっているのではなく、達成すべきレベルが決まっています。
なので、小学生から留年や飛び級も出来ます。
良し悪しはあれど、分からずに進まざるを得ない日本より柔軟だなと思いました。

生まれて2-3カ月でプールに通い出したり、
3-4歳で補助輪を外した自転車に乗り始めたり、
オランダならではの教育もありましたが、
遊ぶ場所も近場に沢山あってなんとものびのびした環境でした。

この教育あってこその幸せにつながる価値観なんだろうなと改めて感じた次第です。

「幸せ」は自分が決めること

では、日本人がランキングの上位の国に行って幸せかと言うと、
慣れるまでは逆にいらいらすることもあって不幸せな気もします。

「なんで約束守んないの?」ってね。

大事なのは、税制や社会保障制度ではなく、その国固有の価値観であって、
逆に言えば、日本でも価値観が変われば幸せになれるんですよね。

っていうか、世界を旅していて日本ほど「幸せ」な国はないと思います。
なのに、それを「幸せ」だと感じられないのってちょっと淋しいですよね。

同じような競争をしているアメリカは17位。良くはないけど日本よりだいぶいい。
アメリカで感じたのは、ほんとアメリカ人ってアメリカ好きだよな。っていうことでした。
対して、日本は…

僕たちが訪問した国の中で意外だったのは、メキシコの16位。
国自体豊かなわけではないし、幸せな国って印象もない。

でも確かに、彼らは、細かいことは気にせず楽しく生きようとする陽気さがありました。

報告書の〆は、国連への報告と言うこともあり、
「各国政府による取り組みを促す」とされていますが、
国任せにせず、国のせいにせず、
まずは、個人個人の心の持ちようだなと少し思わされました。

報告書は国民が不幸を感じる要因として貧困や失業、家庭崩壊、身体疾患などを挙げたうえで、特に大きな影響を及ぼしているのは慢性的な精神疾患だと指摘。各国政府による取り組みを促している。

▼興味ある方は原文(英語)をご覧ください
http://unsdsn.org/files/2013/09/WorldHappinessReport2013_online.pdf

一気に日本が変わるというのは不可能でしょう。
ただ、例えば、企業が長期の休みを多くとれるようにするだとか、
取引先に対して寛容になるだとか、少しずつ変わることは出来ると思います。

個人でいっても、早く仕事を切り上げるとか、相手に少し優しくするとか。

色々オランダで見て、聞いて、刺激を受けたこともあったので、
周りの人と幸せになれるよう今後の自分の人生にも活かしていきたいなと思います。

+++++++

それにしても、20年ぶり?もっと?ぶりの従姉との再会や、
その3人の子ども達と遊んで、生活に混ぜてもらって本当に楽しいオランダ滞在でした。

今度は、チューリップ咲き誇る春に訪れたいところです。

コメント

  1. 匿名 より:

    オランダが第4位だっだのだびっくりしました。           こうゆうきじをもっとだしてほしいです。 

    • 2310 より:

      >匿名さん、
      ありがとうございます!
      もう世界一周は終わってしまいましたが、今後の旅でまた思うことがあったら書きたいと思います。